市民美術大学 特別講座 
「美術界の話をしよう 1」非公開ディスカッション

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秋元雄史

同じようにできないかな。美術館も国際展も、女性何割、外国人何割って。

建畠晢

大学の場合は、グローバリズムが進んだところに予算をつけるということがある。

水沢勉

国が主導してもいいと思う。全国美術館会議で提言するとか。

秋元雄史

いまさらという感じはあるけれども、国際化を進めていかないと今後が展開しないのではないですかね。どんな形でもいいから海外から人を入れていかないと。

建畠晢

みんな考えてると思うんだけど、今の日本の状況ではそうならないんだよ。僕たちと同じことを考えてる人もいるかもしれない。国際展のディレクターも、いつも決まった人たちが出てきて、もう人材がいないんだよね。それでアートの分野以外で活躍している人がなることもある。だから海外で活躍している人がなってもいいんだよね、そうすればいろんなことが広がるわけだから。毎回機会があると提案しているんですが、実現しない。ここ10年ぐらいそうかな。

水沢勉

神奈川県立近代美術館は日本で初めての公立の近代美術館だけど、その初代副館長、後の館長である土方定一は世界を見ていたんだよね。戦後に新聞の紙面で、まず東京と大阪に現代美術館をつくれ、それがないと日本の美術は、コンテンポラリー・アートとしての世界の発信は不可能だ、という内容の文章を書いている。土方さん、非常に国際的にやろうとしていて、特にイタリアとのネットワークをつくろうとしていた。やっぱり近代美術館という以上は国際的な美術館にしたい、そういう理念が当時あったんだと思います。

中村信夫

日本人は「国際的」って大好きだよね。地方行政では「国際」がキーワードとして頻出する。でも実質が伴わないままずっとやってきちゃったところがあるね。

建畠晢

大学は危機感を感じていて、ある程度改善されてきた。議論もあるし、いろいろな試みは起き始めている。同じ議論を国際展に関連する場とか美術館の人とすると、「そうだね」で終わって、先には進まない。グローバリズムとか国際化とか、そういう言葉が出てくるけど、別にグローバル化を目指すとか、それとはちょっと違うと思うんです。でも異なる文化の背景を持つ人と美術館やアートのプロジェクトを運営していくというのは、とても重要だよね。

もちろん異文化からの人を入れるというのは、大変なこともあると思う。大学は個人プレーの要素があるから、そこまでのことにはならないけど、美術館はチームワークだからね。日本の場合、契約概念て本当に問題なんだよ。それを役所の人は理解してないからさ。でもそれなりに成功してる例があるじゃない? 建築の国際コンペは少なくないし、国立国際美術館の新館もシーザー・ペリです。そういうところで成功して、特に問題を起こしてない。だからできないわけじゃないんだよ。きちんと考えれば契約概念も含めて、可能だと思う。今後もそれは主張していくつもりです。

水沢勉

それはやったほうがいいと思う。東京の国立近代美術館は、近代美術館であのような規模はありえないと思います。例えばリニューアルするとして、場所や予算の問題はさておき、近代美術館はまず手をつけてたほうがいいのではないかな?

建畠晢

先例がないことは、公立だと難しいかもね。民間でもいいと思うけど、実際森美術館は外国人の館長やスタッフだったけど、続かなかった。

秋元雄史

そういう失敗をしながら、前進していくものだよ。美術館の運営状況から離れて、民間企業の人材登用の状況を見たりすると、ずいぶんといろいろな国の人達が日本企業の中で仕事しているのではないかと思うんだけどね。ユニクロとか楽天は、全て英語で仕事をやるって言ってるじゃない? 国際競争力が必要という事情があったり、企業はまた別の論理があると思うけど、経営の仕方はある意味で進んでいるんだろうね。でもそういう話をしてくと、日本的な美術館運営の課題と国際性という話に行く前に、まず言葉の壁が出てきちゃうのかな。(笑)

中村信夫

でもこの間タイでプロジェクトやったけど、アーティスト以外でも、地元のスタッフとかみんなしっかり英語話せるけどね。

秋元雄史

語学の問題はあるかもしれないけど、段階的にでも、そっちの方向に向かないことにはね。一気には解消しないと思うよ。

建畠晢

もちろん必ずしも、いいほうに向かうとは限らない。外国人館長が日本人館長よりも良いマネジメントをするかどうか、それは分からない。ただ選択肢の中には入れるということ。

秋元雄史

このまま「どうする?」って言ってるより、とりあえずやってみるほうがいいんじゃないの?

建畠晢

まずは自分のところでやることを考えていかないとね。特に行政に関連して新しいことをやるのは、いろいろな壁があって、それを一つひとつ考えていく、問題を解決していく、その危機感を共有するところから始めるのがいいかもしれない。

秋元雄史

そういう提言なり、意思の表明はしていく必要があるよね。

中村信夫

北九州みたいな地方都市が国際化するにはどうするか、地方都市での文化行政についても今後どうしたらいいか、そういうことも話したいよね

建畠晢

グローバリズムって今、定番みたいになっちゃって、それも問題だよね。

中村信夫

地方での問題って大きいと思う。

秋元雄史

地方で、国際化といっても、観光に後押しされてそれを考えるというところが精一杯で、外国からの労働者が多いとか、実際にコミュニティがあるとかという地域以外では、それほど直接的に結びつかないのではないかと思うのですよ。アートの世界ではグローバルな視点でものを考えることが当たり前で、それが前提になっていると思うのですが、地方で暮らしていて日常的な場面でグローバルな問題を直接感じるということはそれほどないと思うのですよ。国際展と銘打たれた展覧会をやっただけで、もう国際的だとなってしまうといったところもあるのだろうと思う。

建畠晢

「国際芸術祭」という名前は多くて、国際という名前にこだわる。ものすごい数のものが、大小問わずいろいろなところで行われている。トリエンナーレ、ビエンナーレというと、継続することを担保されているけど、そうではないからやめることもできる。それにビエンナーレ、トリエンナーレは美術展という前提があるけど、国際芸術祭といえば演劇や音楽に力入れてもいい。言葉自体が使いやすいからすごく増えたんじゃないかな。名前に「国際」って付いてることは自然に受け入れられているけど、実践の中で国際性を追求していくのは難しいよね。ディレクターは日本人しか候補にあがってこないし、数多くある国際芸術祭も、全て日本人がディレクターという状況が繰り返されている。

伊東正伸

ヴェネチア・ビエンナーレの日本館展示は、過去60年ずっと日本人が交代しながら、コミッショナー/キュレーターを務めてきました。でも今後は、人物本位で海外の専門家を起用というのが時代の流れだと思う。

建畠晢

コミッショナーが誰か他の国のキュレーターと共同でもいい。他の国はいろいろやっているよね。ドイツ館で、ドイツに住んだことはあるけどアメリカ人で韓国人のナム・ジュン・パイクやドイツ出身だけどアメリカに住んでいるハンス・ハーケの展示をやったり。そういうことは、世界では違和感ないことなんだよね。でも日本の場合は難しいかな?

伊東正伸

以前であれば、ヴェネチア・ビエンナーレは日本が関わる数少ないせっかくの国際的な舞台であるのだから、日本国内で最強の布陣を組んで臨むみたいな、ある種の「力み」みたいなものがあって、やや硬直的な対応になっていたのでは。ただ、もう今はもうヴェネチア・ビエンナーレを取り巻く状況も大きく変わってきています。国際展には、国際的なチーム編成で臨むのが自然でしょう。

建畠晢

同時に、グローバリズムは多くの危険性もはらんでいることも事実だけど。

水沢勉

アジアも欧米もこういう状態なのに、日本だけ美術、文化の現場に異文化が全く入ってこないのは、ちょっと異常な感じがします。

建畠晢

みんなはそう思ってないのかもしれない。英語を公用語とする日本企業も出てきたし、大学でも英語で授業をしているところもある。どんどん国際化に向かっているような印象があるけど、実際起きているのは、逆の現象なんですよ。どんどん、どんどん排除してるような。それが怖いんです。

水沢勉

何回かチャンスあったような気がするのだけれど、美術館が内向きな体質が変わっていきそうな時が。

中村信夫

金沢ってなんで入ってないんだろうね。

建畠晢

そういうことを「あれ?」と思う人がいないんですよね。どの美術館でも学芸員を採用する時、それが問題になったことはないと思う。

中村信夫

美術館もたくさんあるから、よくわからないよね。僕たちの世代はみんな顔が見えてるんです。だいたいみんな知り合いっていうか、どこで誰が何してるぐらいはみんな知ってるよね、仲がいいか悪いかは別にして(笑)。今は全く分からないもんね。地方の美術館がたくさんあるけど、実際そこでどんな運営がなされているのかもよくわからない。

秋元雄史

館長会議したって全員分からないでしょう?

建畠晢

そうだね、前はあそこに○○さんていう学芸員がいたなとか、もうちょっと見えてた。昔と比べると、どうなんだろう。

秋元雄史

全般的には美術館は今のほうがいいような気もするけれども、小規模な美術館はきびしいのかなあ。行政単位が小さく、予算規模も小さいところであれば、当然美術館に割かれる人や予算も小さい。やれる範囲も限られてくるし。始めから大きいことなんか考えなくなるだろうねえ。

中村信夫

サラリーマン化だね。

秋元雄史

展覧会の規模が小さくても、学芸員がコツコツと調査研究をしていて、いい記録を残していたり、カタログを制作していたりするんですよね。

水沢勉

頑張っている美術館も多いし、優秀な学芸員もたくさんいるけど、でも一般論として、本当にこれからの10〜20年、充実した美術館活動をやってけるのかということを考えたら、やっぱり問題は多いよね。美術館の中の問題だけではなく、自治体の問題も含めて。


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