市民美術大学 特別講座 
「美術界の話をしよう 1」非公開ディスカッション

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中村信夫

北九州で何かポジティブな話はないかな。ギラヴァンツ北九州がJ3の最下位になっちゃったって話しか思いつかないけど。

秋元雄史

せっかく大金を使って立派なスタジアムつくったのに。ハードに金かけて、ソフトにかけないから、チームがどんどん弱くなっちゃったってことですよね。

中村信夫

美術館も似てるとこありますね。

建畠晢

似てるね。

秋元雄史

バランスが悪いっていうか。

水沢勉

神奈川近代美術館の予算は縮小に次ぐ縮小ですよ、鎌倉館を手放して3館が2館体制になった。これから鎌倉館を維持するのは鶴岡八幡宮で、県は最低限の修復をして渡したんです。これからさらにかなりお金をかけて、全部一旦解体し、1951年の建物を未来に残すんだけど、それも大変な手間です。外壁を全部外して、鉄骨もすべて補強して。

伊東正伸

今後は神社が好きなように使えるんですか?

水沢勉

そうです。予想しなかった、すごい展開になりました。ただ新館は壊してしまったのです。1966年に建てられたんだけど、ちょうどそのとき日本は高度成長期で、新しい板ガラスとか鉄骨とか、建築の構造が刷新されたときだった。その結果、当時とてしては相当の重量の建物になった。建物全体は小さいけれど。新館のほうの耐震構造が弱くて、解体して土地を返還せざるえなくなってしまったのです。

建畠晢

それも象徴的な出来事だね。

水沢勉

国立競技場を壊しちゃったのと似てますよ。66年に建てられた方が維持が難しかったんです。でも51年の「パビリオン」的な建築は残ってる。

中村信夫

この町では、維持管理が大変だから、古い建物を壊す方向にある。結構建築史的に価値のあるものもあるんだけど。もちろん反発もあるから、そう簡単にはいかなくて、でもだからといって維持するつもりはない。どちらかを強行しても、選挙もあるからみんな動きたがらないよね。そういう中で、地方が文化行政をこれからどうしていくか考えて行く必要がある。こういう政令指定都市で、かなり中央から離れてるし、北九州と福岡ではまったく違うんだよね。今福岡はすごく上向きだけど、北九州はそうじゃない。文化で町おこしを考えているみたいだけど。

中村信夫

だからイベント続きになっちゃう。無論イベントやったからって町がおこるわけじゃない。金沢だと、一つの核になる文化政策があって、そこにたまたま人が来るようになったというだけで、計算でやったわけじゃないもんね。

秋元雄史

美術館だけが注目されがちですが、それだけではなくて、長年、文化政策を地道にやってきたんですよ、実は。長期の文化政策の実施が美術館の活動を下支えし、町の文化とつなげているんです。

水沢勉

ハードだけじゃなくて、伝統的なものをかなり制度的に残していけるようにしている。文化は断片ではダメなんじゃないですか、かなり総合的にやらないと。

中村信夫

北九州は、漫画ミュージアムも開館し、劇場もつくり、それこそスタジアムも建設したけど、結局内容が追いつかなくて。他の地方でもあることだけど、こういうことを続けていくと地方自治体は疲弊していくよね。

九州に現代美術館がないという話が出たときに、福岡だけじゃなくて現代美術館なら北九州にもあってもいいんじゃないかって、そういう話も少し出たんだけど、誰も相手にしなかった。九州国立博物館は福岡県が半分出したんだよね。

水沢勉

金沢の工芸館もそうです。基本的に県と市がかなりの資金を出しているはずです。その手法であれば、国の施設は規模はともかくある程度誘致できるでしょう。

中村信夫

ほとんど福岡に取られてるよね、北九州は。国の施設は全部福岡にある。

水沢勉

そこまでして国の施設が要るかっていう疑問もありますけどね。

中村信夫

地方における文化の在り方で、何か参考になるようなものはあるかな? 具体的な提言があるといいんだけど。

水沢勉

即答は難しいですね。


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